固体表面プラズマからの高次高調波

尾崎恒之 石澤 淳 中野秀俊
量子物性研究部

 アト秒パルス光の発生・制御技術やナノメートル分解能技術の確立をめざす際、コヒーレント軟X線光源は不可欠な道具であり、現在世界中の多くの研究機関がその実現に向けて精力的に研究を進めている。本研究では高次高調波の中でも固体高調波という新しい手法に着目し、さらにターゲット材質や表面構造の工夫によるこの分野におけるブレークスルーを模索している。
 まず極短真空紫外(XUV)波長域における固体高調波スペクトルの観測を行った。励起光源にはテラワット級チタンサファイヤレーザ(パルス幅 55fs、ピーク光強度 4×1016 W cm-2、P偏光)を用い、軸外放物面鏡でシリコンウェーハーターゲット上に入射角45度で集光した。図1に、励起光の反射方向に観測される時間積分XUVスペクトルを示す。(a) は通常のスムーズなスペクトルをもつ励起光を用いた場合、そして (b) は狭帯域成分をもつ励起光を使用した場合のスペクトルである。790 nm 中心の基本波に対する14次から16次高調波がはっきりと観測されている。また (b) の場合、励起光スペクトルを反映して高次高調波にも狭帯域成分が存在し、以上からこれらのスペクトルが高調波であることが示される。
 一方、ターゲット種類により2倍高調波強度が大幅に増大するという新しい現象を見いだしている。図2は面精度 λ/4 のパイレックス及びアルミ蒸着ミラーからの2倍高調波スペクトルである。驚くことにパイレックスターゲットを用いた場合、アルミミラーの結果と比較して2倍高調波強度が2桁以上強いことがわかる。また実験からパイレックスの場合高調波強度がショット毎に大きくばらつく傾向があり、またS偏光励起光を用いると2倍高調波がまったく観測されないことも判明した。現在この現象のメカニズムを調べているが、ターゲットの光損傷閾値および固体表面上に生成されるプレプラズマの状態が大きく影響していると考えられる。

図1 極短真空紫外固体高調波スペクトル
図2 パイレックス及びアルミミラーからの2倍高調波スペクトル

【前ページ】 【目次へもどる】 【次ページ】