スポットサイズコンバータ付きフォトニック結晶導波路

新家昭彦 倉持栄一 納富雅也
量子物性研究部
(協力:土澤泰、渡辺俊文、荘司哲文、山田浩治、マイクロシステムインテグレーション研)

 フォトニック結晶とは屈折率の多次元周期構造であり、フォトニックバンドギャップを有するフォトニック結晶をベースとした光回路は将来の超小型大規模集積光回路のプラットフォームとして期待を集めている。我々はSOI(Silicon-On-Insulator)基板を用いて高精度の2次元フォトニック結晶の作製を行っており、これまでにバンドギャップ内で動作する単一モード導波路を実現し、その特異な特性を実証している[1,2]。フォトニック結晶導波路および共振器中の光のモードサイズは非常に小さく、これが光回路小型化に有利な理由の一つであるが、逆にこれが光ファイバーに代表される外部の通常光学系のモードサイズに比べて小さすぎるため、外部系との光結合効率が非常に低くなってしまうという問題をはらんでいた。単純にモードサイズで比較すると、単一モードファイバーとフォトニック結晶の結合損失は30dB程度になる。
 我々はこの問題を解決するために、マイクロシステムインテグレーション研究所の協力のもとに、フォトニック結晶導波路にモード形状およびスポットサイズ変換機構をつけ、断熱的にモードを単一モードファイバのモードに接続することにより、結合効率の極めて高いフォトニック結晶導波路を実現した[3]。試料構造(図1)はフォトニック結晶導波路、シリコン細線導波路、ポリマー導波路の3つに分かれ、それぞれの境界にスポットサイズ(及びモード形状)変換領域が存在している。この構造で実測された結合損失は片端で3-4dBであり、スポットサイズ変換を設けない場合に比べて劇的な効率の改善が達成された。この構造は将来の回路応用にも極めて重要な1ステップであるが、それだけでなく従来構造では結合効率が低すぎて不可能だった様々な物性研究も可能になると考えられる。

[1] M. Notomi et al., Phys. Rev. Lett. 87, (2001) 253902.
[2] M. Notomi et al., IEEE J. Quantum Electron. 38, (2002) 736.
[3] A. Shinya et al., SPIE Photonics West 2003, 5000-21, San Jose, USA. (2003).

図1 スポットサイズ変換機構付きフォトニック結晶導波路の模式図(左)及び作製した構造の断熱変換部の走査型電子顕微鏡像(右)。

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