霧を用いた3次元レジスト塗布技術とSi立方体上のナノパターン形成

山崎謙治 生津英夫* 
量子電子物性研究部

 NEMS(ナノ電気機械システム)など様々なナノテクノロジへの応用を目的として、ナノメータオーダの解像度で立体的構造を作製する、いわゆる3次元ナノ加工技術の重要性が増している。我々は、既に電子ビーム(EB)リソグラフィを用いたレジスト材料の3次元ナノ加工・パターン形成技術を開発し、10nmという高い解像度と高速性を得ている [1]。今回、この技術を様々な材料へ適用するために、立体試料の表面上にレジストを一括塗布する、新たな3次元レジスト塗布技術を開発した。更にSi立方体上に塗布したレジストに、EBを用いた3次元パターン形成を行い、良好なパターン形成結果を得た。
 図1は作製した塗布装置の概略である。超音波霧発生器によって生成したレジスト溶液の霧のうち、微細な霧の粒子のみがN2ガスにより試料室に移送され、そこで細かい霧の準静的な雰囲気が形成される。1mmのSi立方体をこの雰囲気中に配置し、これにポリメチルメタクリレート(PMMA)レジストの塗布を試みた。立方体基板の各面上に、小さい面粗さでレジストを均一に塗布するためには、レジストの溶剤、試料温度、移送ガスの流量が重要な要因であることが分かった。例えば、溶媒にはPMMAの溶解度が低めで表面・界面エネルギーが抑えられるメチルイソブチルケトンが適当であること、基板上にレジスト溶液の薄膜ができるように、結露点付近で微妙な温度調整が必要であることなどである。条件の最適化により、面間・面内とも50〜60%の誤差範囲内の膜厚でレジストが塗布できた[2]。図2左は、このSi立方体上に3次元EBリソグラフィによりパターンを描画した結果で、各面とも同様のパターン形成が出来ている。更に、このレジストパターンをマスクとしたドライエッチングを行い、SiO2膜に転写したパターンから50nm以下の解像度が得られることを確認した(図2右) [3]。
 この技術により、様々な立体材料にレジスト塗布が可能となり、3次元EBリソグラフィおよびエッチングと組み合わせることにより、自由度の高い3次元ナノ加工ができると考えられる。3次元ナノテクノロジに向けた重要なキー技術となることが期待できる。     
[1] K. Yamazaki et al., Jpn. J. Appl. Phys. 43 (2004) L1111-L1113.
[2] K. Yamazaki and H. Namatsu, Tech. Digest 19th IEEE Conf. MEMS (2006) 254-257.
[3] K. Yamazaki and H. Namatsu, Jpn. J. Appl. Phys. 45 (2006) L403-L405.

*現所属:NTT-AT

図1 塗布装置の概略
図2  立方体上のパターン(左)とSiO2膜に転写した細線(右)

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