各研究部の研究概要

機能物質科学研究部                         鳥光慶一
 機能物質科学研究部では、原子・分子レベルでの物質制御・配列制御に基づく新物質の創製・新機能デバイスの構築および生体機能を利用した革新的デバイスの提案を中心に、情報通信技術において大きな変革をもたらす物質科学分野における学術的貢献を目指して研究を進めています。
 この目標に向かって、薄膜材料、ナノチューブ、ナノバイオを中心とする、薄膜材料研究グループ、低次元構造研究グループ、分子生体機能研究グループの3つの研究グループが、広範囲な物質材料を対象とした研究を進めています。その範囲は、超伝導を含む高性能薄膜材料からナノチューブを中心とするナノ構造体、さらには受容体タンパク質などの生体分子に至り、独自の物質創製技術や制御技術、精密測定技術を基に最先端の研究を連携して行っています。これにより、情報流通社会における技術革新をもたらす機能物質の研究が可能となっています。
 ナノバイオ分野は、物性基礎研ならびに本研究部における重点研究分野であり、英国拠点であるオックスフォード大学との共同研究を中心として、中国や他の研究組織と研究員の派遣交流をはじめとする密接な研究交流を進めています。


量子電子物性研究部
                        山口浩司
 量子電子物性研究部(物性部)は21世紀の情報通信技術に大きな変革をもたらす半導体や超伝導体を用いた固体デバイスの研究を推進しています。特に将来の量子情報処理に向けた量子力学的な原理に基づくデバイス研究の着実な推進と関連する研究の促進に力を入れています。私たちは開かれた研究所を標榜し、多くの研究機関と協力して基礎研究に取り組んでいます。
 物性部の5つのグループで進めている研究は、半導体や超伝導体のコヒーレント制御、半導体へテロ(ナノ)構造におけるキャリア相関、電子スピンや核スピンの操作を目指したスピントロニクス、単一電子の正確でダイナミックな制御、低消費電力を実現するナノデバイス、原子トラップ/光学、化合物半導体を用いた新しいナノメカニクスなどです。これらの研究は最先端のナノリソグラフィ、精密なナノ構造作製プロセス、高品質結晶成長、第一原理計算をはじめとした理論研究により支えられています。

量子光物性研究部                           都倉康弘
 量子光物性研究部(量光部)は光通信技術や光情報処理技術に大きなブレークスルーをもたらす革新的基盤技術の提案、ならびに、量子光学・光物性分野における学術的貢献を目指して研究を進めています。
 量光部の3つのグループでは、光の量子状態制御および光などによる物質の量子状態制御、極短パルス光による高速現象の解明や量子ドットなどナノ構造における半導体光物性、二次元フォトニック結晶による超小型集積光回路などの研究が行われています。
 この1年で、量子暗号の高性能化と量子もつれ光子対の生成、一万を超えるQ値の化合物フォトニックナノ共振器構造、および超高Q値フォトニック結晶共振器での光子寿命およびパルス遅延測定などで進展がみられました。


【前ページ】 【目次へもどる】 【次ページ】