三次元SiOx導波路プラットフォームによる
モノリシック集積ファイバモード合分波器

開 達郎1, 2 土澤 泰1, 2 西 英隆1,2 山本 剛2 山田浩治1, 2
1NTTナノフォトニクスセンタ 2NTT先端集積デバイス研究所

空間多重伝送技術は、マルチモードファイバの各伝搬モード上に光信号を多重することで、周波数利用効率を飛躍的に向上させる技術として期待されている。その伝送系では、各モードを光学的に合分波するモード合分波器が必要となるが、空間光学型やファイバ型の素子は集積性、安定性に乏しく、空間多重度増大に伴いネットワークコストを維持することが困難となる。そこで、本研究では、高集積、低コスト化が容易な三次元SiOx導波路プラットフォームを用いて作製したオンチップ集積型モード合分波器を報告する。

図1(a)に3モード合分波器の概略図を示す。異なる屈折率を有する2層SiOx導波路コアを用いて三次元導波路構造が構成される。下層、上層コアの屈折率をそれぞれ1.50、1.49、層間膜厚を2.0 µmとした場合の電界分布計算結果を図1(a)中に示す。ファイバ結合端面(0 mm)では各ファイバモードと素子は低損失に結合し、各コア幅をテーパで変化させた後(3 mm)は各モード光強度がそれぞれ異なるコアに集中する。各コアを分離し(3.2 mm)、コア3、 4を多モード干渉計で合波することで(3.7 mm)、LP01、LP11a、LP11bモードはそれぞれシングルモード導波路ポート1、3、2に接続される。本設計の素子サイズは約0.6 mm2、損失は2.3 dB以下、モード間クロストークは-11 dB以下である。本素子は、200℃以下で広範囲の屈折率制御が可能なSiOx膜を用いて作製されることで、導波路積層時の熱ダメージ低減、およびSiプラットフォーム上集積が可能となる [1, 2]。図1(b)に作製素子における各ファイバモード光入射に対する出力光near-field pattern (NFP)の測定結果を示す。概ね計算結果と整合するNFPを示しており、出力光のモード間クロストークは-6.4 dB以下であった。本結果は、三次元SiOx導波路モード合分波器の原理動作を示すものであり、今後は作製プロセス改善による低クロストーク化、および、Si/Geアクティブ素子との一体集積を目指す。

[1]
T. Hiraki et al., Elec. Lett. 51, 74 (2014).
[2]
T. Hiraki et al., Proc. in OFC2015 W1A.2 (2015).

図1 (a) モード合分波器の概略図および電界分布計算結果。(b) 各ファイバモード入射に対する出力光near-field pattern (NFP)測定結果。