SiOxスポットサイズ変換器を集積したオンSiメンブレン分布反射型レーザ

西 英隆1,2 藤井拓郎1,2 武田浩司1,2 長谷部浩一1,2
硴塚孝明1,2 土澤 泰1,2 山本 剛2 松尾慎治1,2
1NTTナノフォトニクスセンタ 2NTT先端集積デバイス研究所

 我々はSi基板上の小型・低消費電力レーザ技術の開発を進めており、これまでにオンSiメンブレンDistributed-Feedback(DFB)レーザを作製し、世界最小動作エネルギーコストである171 fJ/bitを実現している[1]。一方、Siフォトニクス技術では低損失ファイバ結合を可能にするため、Siテーパと低比屈折率差(低∆) SiOx導波路から構成されるスポットサイズ変換器(Spot-size Converter, SSC)を開発してきた[2]。今回、分布反射型(Distributed-Reflector, DR)レーザ構造の導入によるさらなる低エネルギーコスト化、およびSiOx-SSCの集積を実現した。
 図1(a)に作製したデバイス構造を、図1(b)に上面顕微鏡像を示す。レーザ部は、結合係数1500 cm-1を有するInP(厚さ250 nm)埋込みDFB活性領域(InGaAsP系6QW、厚さ150 nm、長さ50 µm、幅0.8 µm)、後方の高反射率Distributed Bragg Reflector (DBR)領域、および出力InP細線導波路から構成されるDRレーザとなっており、短共振器化による高変調効率化および片側出射化が可能となる。出力InP細線導波路は横方向テーパ状に形成され、SSCを介して∆ = ~3%のSiOx導波路と接続される。
 図1(c)に作製したメンブレンDRレーザの電流-光出力(I-L)特性を示す。SiOx導波路出口前方に設置したPDによって受光した場合、SiOx導波路端面での反射によって大きなキンクが観測されたが、SiOx導波路と高NAファイバ(モード径 4.1 µm)との直接接続によって受光した場合、端面反射が抑制され良好なI-L特性が得られた。閾値電流は0.6 mA、最大出力は約0.7 mWであった。ファイバ結合損失は2.7 dBが得られ、従来に比べて損失を約6 dB改善した。また、図1(d)、(e)に25.8 Gbps NRZ信号による直接変調時のアイパターンを示す。バイアス電流(Ib)が2.5 mAの際に、エネルギーコスト132 fJ/bitを達成した。

図1 (a)SiOx-SSC集積型メンブレンDRレーザの断面構造。 (b)作製したデバイスの上面顕微鏡像。(c)I-L特性。(d) (e)Ib = 5.0 mA、2.5 mA時の25.8 Gbps-NRZ信号直接変調アイパターン。