グラフェン表面に構築したバイオインターフェースを用いたタンパク質検出

上野祐子1 古川一暁2
1機能物質科学研究部 2明星大学

 グラフェンの表面に、分子認識機能場として動作する2次元バイオインターフェースを構築し、これがガンマーカなどの生体内で重要なタンパク質を、選択的かつ高感度に検出するバイオセンサとして動作することを確認した。従来は、水溶液中に分散した酸化グラフェン(GO)が、タンパク質検出の分子認識機能場として盛んに用いられてきた。これに対し、本研究で実現した固体表面の2次元バイオインターフェースにおいては、GOだけでなく、水に分散しないグラフェンも分子認識機能場として利用可能である[図1(左)]。この特徴によってマイクロ流路デバイスとの融合が可能となり、定量的な比較や、アレイ化による多種類タンパク質の同時分析などに成功している[1]。
 バイオセンサの応答信号の定量的な比較のため、グラフェンとGOとを同一基板の表面(SiO2)上に固定し、蛍光標識したアプタマ(分子認識機能をもつDNA)を表面に修飾した。アプタマには、PSA(前立腺がんマーカタンパク質)と選択的に結合するものを用いた。PSAを含む溶液を導入すると (33 µg/mL @ t = 100 s)、グラフェンおよびGO表面で蛍光が観測され、純粋を導入しながら段階的に濃度を希釈すると、蛍光強度もこれに応じて弱くなった(20, 14, 11, 9 µg/mL @ t = 300 s, 400 s, 500 s, 600 s)[図1(右)]。以上から、グラフェンとGOのいずれの表面も、バイオセンサとして機能し、PSAの検出に成功したことが示された。PSA添加前の暗状態の平均値とPSA添加後の蛍光強度の最大値との差分で、グラフェンとGOとの応答強度を比較すると、グラフェンが3倍以上の値を示した[2]。このことから、発光型バイオインターフェースを構築するプラットフォームとして、グラフェンがより優れていることが明らかになった。
 本研究はJSPS科研費JP26286018の助成を受けたものである。

図1 (左)グラフェンアプタセンサの概念図。(右)グラフェンとGOのPSA検出信号の定量比較。