電気光学変調器ベース光周波数コムを用いた低雑音ミリ波発生

石澤 淳1 日達研一1 西川 正2 後藤貴大2 寒川哲臣1 後藤秀樹1
1量子光物性研究部 2東京電機大学

 我々は、将来の時刻・周波数同期技術の精度を向上するため、光周波数基準からマイクロ波やミリ波へと高精度に周波数変換する技術を探索している。今まで、線スペクトルが等しい間隔で並んだレーザ光源であり、光の物差しにもなる光周波数コムに注目し、25 GHz周波数間隔の電気光学変調器ベース光周波数コム(EOMコム)を開発してきた。EOMコムは広いモード周波数間隔という利点があり、大容量通信や天文分野に有用なツールである。その一方で、中心波長から離れるに従って、雑音が増幅され、各線スペクトルの幅が拡がるという問題点があった。
 本研究では、このEOMコムの"問題点"に注目し、高感度な「雑音検出器」として用い、従来よりも低雑音な周波数可変マイクロ波・ミリ波を発生させることに成功すると共に、上記のEOMコムの問題点も克服した[1]。具体的には、光周波数コムと、スペクトル幅が狭く雑音が低い参照レーザ(基準レーザ)との干渉によって光周波数コムのスペクトル上で増幅された雑音情報を電気信号に変換することでマイクロ波・ミリ波発生装置の雑音を高感度に検出する。その信号を用いて、マイクロ波・ミリ波発生装置の雑音を低減する[図1(a)]。EOMコムのスペクトル幅はマイクロ波・ミリ波発生装置の雑音を反映しており、中心波長から離れるにしたがって雑音が大きくなるために中心波長から大きく離れたスペクトルを利用すると、マイクロ波・ミリ波発生装置の雑音をより大きく低減できる。25 GHz信号の中心周波数から1 kHzオフセット周波数の雑音は、–110 dBc/Hzにまで低減できた[図1(b)]。これは、市販で最も低雑音級のマイクロ波・ミリ波発生装置よりも雑音を100分の1まで低減できたことになる。同時に参照に用いた線スペクトル幅まで雑音低減したことを意味し、EOMコムの問題点も解消した。また、本技術の汎用性を示すために、低雑音化されたマイクロ波・ミリ波発生装置の発振周波数の可変範囲の拡大を図り、6~72 GHzの帯域で連続可変することにも成功した。

図1 (a) マイクロ波・ミリ波発生装置の雑音低減の原理。(b) 25 GHzミリ波信号の雑音低減。