ディープサブ波長プラズモニック導波路への高効率モード変換の実現

小野真証1,2 谷山秀昭1,2 Hao Xu1,2 常川雅人2,3 倉持栄一1,2
野崎謙悟1,2 納富雅也1,2,3
1NTTナノフォトニクスセンタ 2量子光物性研究部 3東京工業大学

 プラズモニック導波路は光の波長よりもはるかに小さな伝搬モードを光回路内で活用することを可能にする。特に、ディープサブ波長サイズの導波路においては、ナノワイヤや2次元層状物質のようなナノ物質と光が効率的に相互作用することができ、超小型・超高速な光デバイス等の実現が期待される。一方で、プラズモニック導波路における伝搬損失は大きく、長距離伝搬は低損失な誘電体導波路に担わせる必要がある。しかし、両者における伝搬モードは大きく異なるサイズと形状をもつため、高効率なモード変換は容易ではなかった。そのため、これまで試みられたモード変換器では厚み方向のサイズは殆ど不変であった。本研究では、Si細線導波路(コアサイズ: 400 × 200 nm2)と金属-絶縁体-金属(MIM)構造のプラズモニック導波路(コアサイズ: 50 × 20 nm2)との間で、–1.7 dBという高効率モード変換に成功した[1]。導波路厚を200 nmから20 nmに縮小できており、大幅なサイズ縮小比向上に成功している。また、MIM導波路のコアサイズは(λ/n)2/2000(λ: 波長、n: 屈折率)に達する。
 我々のモード変換器は、横方向の2次元テーパ構造によって構成されており、Siと金薄膜の間に微小エアギャップを有している[図1(a)]。図1の(b)と(c)に、数値計算によって得られた伝搬の様子を示す(λ = 1.55 µm)。Si細線導波路における伝搬モードのサイドローブが金薄膜に引き寄せられ、大きく厚みの異なるMIM導波路に結合されている。我々は、構造パラメータの異なる変換器で結合効率を見積もり、テーパ長の最適化だけでなく、微小ギャップの導入が大きく結合効率を向上させることを見出した。これにより、作製困難な3次元テーパ構造を導入することなく、横・厚み方向のモード縮小を伴う高効率3次元モード変換が可能となった。作製したモード変換器における結合効率は、ギャップ幅40 nm、テーパ長600 nmで–1.7 dBという高い値であり、計算結果(–1.4 dB)とも良い一致を示した。本成果により、ディープサブ波長サイズのプラットフォームが光回路内に導入されることが期待される。
 本研究はJSPS科研費JP15H05735の助成を受けたものである。

図1 (a) モード変換器の概略図。(b) 電界分布の上面図(ギャップ幅40 nm、テーパ長400 nm、y = 10 nm)。 スケールバー: 500 nm。(c) 電界分布の側面図。スケールバー: 200 nm。