低容量ナノ受光器による高効率な光-電圧変換

野崎謙悟1,2 松尾慎治1,3 藤井拓郎1,3 武田浩司1,3 小野真証1,2
倉持栄一1,2 納富雅也1,2
1NTTナノフォトニクスセンタ 2量子光物性研究部 3NTT先端集積デバイス研究所

 オンチップ光処理に向けた光ディテクタ(PD)には、高密度集積が可能な低消費エネルギーと微小サイズが要求される。通常のPDは後段に電圧増幅を必要とするため消費エネルギーが高いが、もし極めて小さい静電容量(C)のPDが実現できれば、高い負荷抵抗の接続のみで高い光-電圧変換効率を可能にする光受信回路が期待される。我々はフォトニック結晶(PhC)導波路に微小なInGaAs吸収層を埋め込む技術によって、理論容量が0.6 fFと低い小型のPDを実現した[図1(a)][1]。長さ1.7 µmと短いながらも1 A/Wの高い光感度と40 Gbit/sの高速応答が可能である。本研究では、このPhC導波路PDと負荷抵抗を接続し、光-電圧変換を評価する回路を構成した[図1(b)]。電気光学(EO)プローブ法を用いて発生電圧を測定した結果、増幅器集積型と同等以上である最大4 kV/Wの高い光-電圧変換効率が得られた[図1(c)]。動作帯域は、EOプローブ測定に必要なストリップラインの寄生容量のために数Gbit/sに制限されたが、PDの理論容量を考えると40 Gbit/s動作も可能と推定された。これらの結果は、低容量PDにより増幅器不要な低消費エネルギー光受信が実現できることを示唆しており、チップ上での光ネットワークをはじめとする光電融合光処理に向けて重要な要素技術となることが期待される。
 本研究の一部はJST、CREST (JPMJCR15N4) の支援を受けたものである。

図1 (a) フォトニック結晶導波路型PDの構造。挿入図は、計算された光電界分布(上)と断面SEM写真(下)。
(b) 負荷抵抗集積型PDの構成と等価回路。(c) 負荷抵抗に対する光-電圧変換効率の測定結果。