フォトニックバンド構造の直接測定

納富 雅也、玉村 敏昭
機能物質科学研究部

フォトニック結晶は「光の絶縁体」が実現可能であることが指摘されて以来、超小型光集積回路の実現や自然放出光の制御等にブレークスルーをもたらす材料として期待を集め、様々な方法を用いて作製の試みが活発に行われている。しかし光の特性から3次元ギャップは容易でないため可視や近赤外領域での完全ギャップは未だ確認されていない。フォトニック結晶の研究における一つの問題に、実際に作製された試料のフォトニックバンド構造を測定によって直接求める手段が無いことが挙げられる。我々はフォトニック結晶中のビーム伝搬がバンド構造に依存する事実に着目し、ビーム伝搬測定からバンド構造を逆算できることを明らかにした。またリソグラフィ技術とバイアススパッタの形状保存モード(autocloning mode)により作製された(東北大学と共同)3次元フォトニック結晶のバンド構造測定に成功した。
フォトニック結晶中の伝搬モードであるブロッホ波の伝搬方向は、金属のフェルミ面に相当するバンド等周波数面の法線方向になることから、入射波の波数ベクトルとビーム伝搬方向及び結晶対称性の情報から等周波数面を構築することができ、さらに波長を掃引すればバンド構造を決めることができる。実験では試料端面から可変波長レーザビームを入射し、結晶中での伝搬を上面からCCDカメラにより観察した(図1)。測定された伝搬角データから決定されたK点付近のフォトニックバンド構造を図2に示す。K点直上に波長0.93μm付近でギャップが開いていることがわかる。またギャップを挟んで三回対称のバンドが形成されていることがわかる。
この測定法は単純な角度測定からバンドを決めるために高精度であり、結晶中の光伝搬を決定する等周波数面の形状を正確に決めることができる。このような詳細なバンド構造の情報は、3次元的フルギャップの開いたフォトニック結晶の実現にむけて極めて重要な情報となる。

図1:3次元Si/SiO2フォトニック結晶試料とバンド構造測定実験配置

図2:実験的に決定されたフォトニック結晶の3次元的バンド構造


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