1998年7月13日、14日、NTT厚木研究開発センター講堂で「量子光学とメゾスコピック物理」国際シンポジウムが基礎研究所と科学技術振興事業団・創造科学技術推進事業(ERATO)・山本量子ゆらぎプロジェクトの共催で開催された。量子力学が誕生して70年が過ぎようとしている今日においても、量子力学の本質の部分には私たちの直感からは不可解な点が多く残されている。
 しかし最近ではナノスケール微細加工技術を駆使し、光子や電子を量子レベルで制御し、量子力学の原理、現象を実験的に検証できるようになりつつある。本シンポジウムは、この分野で精力的に研究をしている基礎研究所と山本プロジェクトが中心となり、国内外の研究交流を活発化させるために開催されたものである。
 中村守孝・科学技術振興事業団理事長、松田晃一・NTT先端技術総合研究所所長の挨拶の後、山本喜久・NTT基礎研究所主席研究員/スタンフォード大学教授/ERATOプロジェクトリーダーによる基調講演が行われた。13日はメゾスコピック物理をテーマに、T. Claeson・ Chalmers工科大学教授、樽茶清悟・東京大学教授/NTTリサーチプロフェッサの招待講演を含めて、単一電子と単一光子の制御技術、フェルミ粒子とボゾン粒子の量子統計、ナノスケールから原子スケールへと進展する微細加工技術の発展について、口頭発表9件、ポスター発表12件が行われた。14日は量子光学をテーマにS. Haroche教授 (Ecole Normal Superieure, Paris)、上田正仁助教授 (広島大学) の招待講演を含め、微小共振器による自然放出光の制御とマイクロレーザー、スクイーズド状態と冷却原子の分光、原子の誘導放出とボーズ凝縮、量子情報処理技術の発展について、口頭発表で10件、ポスター発表で12件が行われ、活発な討論が行われた。
 参加者は350名(内訳、大学、企業関係120名、NTT関係120名、山本プロジェクト、科学技術庁関係110名)を数え、この分野での研究交流を活発化するだけでなく、NTT基礎研究所の研究成果を情報発信する場ともなった。参加者からは、未来には新しい大きな可能性があるという印象を受けた、日本の研究機関の努力からこのような新しい研究分野が生まれることは喜ばしいなどの感想が寄せられた。なお、本シンポジウムの内容はプロシーディングにまとめられ、国内外の研究機関に配布された。またビデオにも記録され、NTTの研究広報に利用されている。





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