高温動作 AlGaN/GaN ヘテロ構造 FET

前田 就彦、斉藤 正、椿 光太郎、西田 敏夫、小林 直樹
量子物性研究部

 GaN系化合物半導体はバンドギャップエネルギーが大きく、結晶結合力が大きいため、破壊電界強度および飽和電子速度が高く、高温・高耐圧・高出力動作の高周波電子デバイス材料として非常に有望である。我々は、AlGaN/GaNヘテロ構造FETを作製し、400℃ の高温においても電流飽和およびピンチオフ特性のともに良好なトランジスタ動作を実現した。
 作製したヘテロ構造FETは、300Å Al0.15Ga0.85N/1μm GaN/1000Å GaN/1000Å AlN/SiC(0001) なる層構造を持ち、ゲート長およびゲート幅はそれぞれ 2および20μmである [口絵参照]。AlGaN/GaNヘテロ構造においては特有の大きな圧電効果が存在し、格子歪みの大きな格子非緩和構造を用いることにより 1×1013 cm−2 以上の非常に高い2次元電子濃度が実現される[1]。図1は400OCにおけるトランジスタの静特性を示したものである[2]。良好な電流飽和特性と同時に、良好なピンチオフ特性が得られている。高温において従来観察されていたピンチオフ動作の不良は、高周波特性の劣化、雑音の増大、素子耐圧の低下等、大きな悪影響を及ぼすため、デバイスの実用化にあたっては良好なピンチオフ動作の実現が不可欠である。図1の良好なピンチオフ特性は、結晶欠陥やエッチングによる損傷を大きく低減したことによって得られた。図2は、作製したFETの相互コンタクタンス(gm)の温度(T)依存性を示したものである。温度上昇とともにgmは低下するものの、300OC以上においてはgmの低下率は小さく、作製したFETの高温デバイスとしてのポテンシャルの高さが示されている。エンジン、溶鉱炉などの他、衛星通信で必要とされる高温高出力の高周波デバイスへの応用が期待される。
[1] N. Maeda, T. Nishida, N. Kobayashi, and M. Tomizawa, Appl. Phys. Lett. 73(1998)1856.
[2] N. Maeda, T. Saitoh, K. Tsubaki, T. Nishida, and N. Kobayashi, to be published in Jpn. J. Appl. Phys., Part 2 (1999).

図1:400℃におけるI-V特性

図2:相互コンダクタンス(gm)の温度(T)依存


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