極微細パタン形成のための超臨界レジスト乾燥法

生津 英夫
先端デバイス研究部

  革新的デバイスを製作するためには幅の狭いパタンが必要となるが、その高さはあまり減少できないために、パタンのアスペクト比(高さ/幅)は増加していく。その結果、パタンが倒れやすくなる。この倒れは、特に現像や洗浄工程でのリンス液の乾燥時に顕著となる。パタン倒れとパタンサイズの関係は、次のように表すことが出来る;(パタン間隔)<k×(アスペクト比)2[1]。kはリンス液の表面張力に依存する定数である。この関係が成り立った時パタンは倒れる。従って、どのパタンサイズでもパタンが倒れないようにするためには、表面張力の小さいリンス液を用いれば良いことになる。そのための究極的なリンス液は、表面張力がゼロである超臨界流体である。超臨界流体を用いて乾燥(超臨界乾燥)すれば、表面張力がパタンに作用しないためパタン倒れが起こることはなくなる。
  超臨界流体としては、臨界点の低い二酸化炭素が使いやすい。しかしながら、単純にドライアイスや液化二酸化炭素を用いて超臨界乾燥を行った場合には、膜厚増加によるレジストパタンの変形が生じてしまう。この原因を分析した結果、膜厚増加はレジスト膜中に拡散した水により引き起こされることがわかった。反応室の壁に付着した水分が超臨界二酸化炭素に溶け込み、膜中に拡散する。この結果、超臨界乾燥時に膜中の水分を核にして二酸化炭素が放出されるために膜厚増加が生じる。図1は、超臨界二酸化炭素中の水分量と超臨界乾燥後のレジスト膜厚増加量の関係を示したものである。水分量の減少とともに膜厚増加が減少することがわかる。従って、水分を制御して超臨界乾燥を行うことにより膜内からのガス放出の核がなくなり、倒れや変形のないパタンが得られることになる。図2は、通常の窒素雰囲気下で乾燥した場合と、水分制御した超臨界乾燥した場合のレジストパタンである。通常乾燥では表面張力によりパタン倒れが生じているが、超臨界乾燥では倒れず、また変形も生じていないことがわかる。これまで倒れることにより未解像となっていたパタンが、開発した水分制御超臨界乾燥により初めて形成可能となった。
[1] H. Namatsu et al., Appl. Phys. Lett. 69(1995) 2655.

図1:水分量と膜厚増加量

図2:(a)通常乾燥と(b)水分制御超臨界乾燥法により形成したレジストパタン


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