「メゾスコピック超伝導」国際シンポジウム

2000年3月8日から10日までの3日間、NTT厚木研究開発センター講堂において、「メゾスコピック超伝導」国際シンポジウムが、NTT物性科学基礎研究所、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本物理学会の共催で開催されました。
メゾスコピック領域での超伝導現象に関する研究は、「メゾスコピック超伝導」と呼ばれる一つの新しい分野として、近年盛んになりつつあります。これは、アンドレーフ反射と呼ばれる超伝導体/常伝導体界面で電子がホールに変化して反射される量子現象をはじめとして、多くの特異な量子効果をもたらすことが期待されているためです。本シンポジウムは、同分野をリードするNTT物性科学基礎研究所が中心となり、国内外の著名な研究者が一堂に会し、最新の研究成果について活発な意見交換を行うことを目的として開催されたものです。
8日は、まず野口哲男・NEDO産業技術研究開発部部長代理、石原直・NTT物性科学基礎研究所長の開会の挨拶、高柳英明・機能物質科学研究部長の本シンポジウム開催の経緯についての説明が行われました。その後、アンドレーフ反射の物理をテーマに、アンドレーフ反射の発見者のA. Andreev教授(Kapitza Institute for Physics Problems, Russia)の招待講演を含め、アンドレーフ反射に起因する新しい量子現象について、8件の口頭発表がありました。当日夜には、メゾスコピック超伝導全般にわたる36件のポスター発表が行われ、活発な議論が交わされました。9日は、超伝導体/常伝導体結合系における量子現象をテーマに、I. Kulik教授(Bilkent University, Turkey)、T. Claeson 教授(Chalmars University of Technology, Sweden)の招待講演を含め、超伝導微小構造における電子の振る舞い、ノイズ特性、超伝導体/高移動度半導体結合系について、12件の口頭発表がありました。10日は、量子計算をテーマに、中村泰信氏(NEC基礎研)、J. Mooij 教授(Delft University of Technology, The Netherlands)の招待講演を含め、超伝導を用いた量子計算とその基本となる量子ビットの実現、制御について、7件の口頭発表がありました。参加者は、127名[内訳、大学、企業関係者88名(国外45名、国内43名)、NTT関係者39名]を数え、参加者からは、充実した発表内容に関して賞賛の声が寄せられました。なお、本シンポジウムの内容は、プロシーディングスにまとめられ、Physica Cの特別号として出版される予定です。また、ビデオにも記録され、NTTの研究広報にも利用されています。





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