Si/Ge系材料における酸化の選択性を利用した新しい構造形成法を提案する。SiGe混晶の酸化については既に数多くの報告がなされており、Siが優先的に酸化されることが良く知られている。この反応をSi/Ge多層膜に適用し、界面でSiが優先的に酸化されることを用いて、半導体/絶縁体多層構造を形成することを試みる。そのために酸素のイオン注入を用いるが、反応性の異なる材料からなる多層膜中では、注入されたイオンは、従来のイオン注入での現象とは非常に異なる振る舞いを示す。
プロセスの概要を図1に示す。Si/Ge多層膜をSi基板上に形成し、酸素イオンを注入する。本実験条件は、Ge層28nm、Si上層30 nmであり、注入エネルギー、30keV、ドース、1x1017 c m-2である。注入後、水素及びAr中で熱処理を行った。図2は、オージェ電子分光(AES)により調べたSi、Ge、及びOの深さ方向組成分布であり、(a)はイオン注入直後、(b)は400℃、H2中で熱処理した後、さらに600℃、Ar中で30分間熱処理した後の分布である。酸素の分布は、イオン注入で通常みられるガウス分布とは著しく異なり、Si層とGe層の界面に集中している。注入時は基板温度を100℃以下に保っているので、通常の意味での熱拡散で再分布したのではない。熱処理後、界面での酸素のピークがより急峻になり、また、Ge層の深い方の裾に酸素のピークと対応するディップが現れる。すなわち、イオン注入直後、界面付近は Si、Ge、及び集中したOの混合層であるが、熱処理過程でSiO2が形成されると同時に、Geの掃き出しが起きている。このように、反応の選択性を用いると、半導体中に絶縁体として理想的な特性を持つSiO2を多層に埋め込むことができ、大きな閉じこめ効果を利用した光デバイス等への応用も期待される。
図1:Si/Ge多層膜への酸素イオン注入による多層埋込み酸化膜の形成プロセス。.
図2:Si、Ge、Oの深さ方向組成分布:
(a)注入直後の分布、(b)400℃でH2中熱処理を行った後、さらに600℃でAr中熱処理を行ったときの分布
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