ブロック共重合体の自己組織化を用いた2次元パターニング 山口徹 山口浩司
量子電子物性研究部ブロック共重合体リソグラフィは、16 nm技術ノード以降のパターニング手法として注目を浴びている。本技術をデバイス作製へと適用するためには、ブロック共重合体ミクロ相分離構造のドメイン界面の配向を精密に制御することにより、2次元パターニングを実現することが最大の課題である。我々は、ネガ型レジストである水素化シルセスキオキサン(HSQ)を配向ガイドとして用いたグラフォエピタキシ手法により、ポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるブロック共重合体の垂直ラメラ構造の2次元パターニングに成功した[1]。実現の鍵は、(1)基板表面の中性化と、(2)電子線露光技術により精密に形成した2次元の親水性配向ガイドパターンの導入、の2つである。それぞれラメラ相の垂直配向、および面内2次元配向を誘起するのに重要な役割を果たしている[図1(a)]。
直角配向ガイドを用いることにより、4周期分の垂直ラメラ相(16 nmハーフピッチ)を強制的に直角に曲げることができる[図1(b)]。注目すべきは、本構造がブロック共重合体のみの純粋な系で形成できていることであり、ブロック共重合体自身が持つドメイン形状・周期における高い柔軟性により実現されている。六角形配向ガイドを用いることにより、同軸シリンダ相も形成することが可能である[図1(c)]。特に、配向ガイドのピッチを変えることにより、PSとPMMAリングの層数を精密に制御できる。このような精密配向制御は、ブロック共重合体の自己組織化(ボトムアップ)と高精度電子線露光技術により形成された配向ガイド(トップダウン)の長所を最大限に生かすことにより初めて成し遂げられるものである。さらに、これらの湾曲したラメラ相や同軸シリンダを下地基板へ転写可能である[図1(d)]。本技術により、最先端のトップダウン技術が及ばない極限解像領域において、ブロック共重合体リソグラフィのナノデバイス作製への適用が可能になると期待される。[1] T. Yamaguchi and H. Yamaguchi, Adv. Mater. 20 (2008) 1684.
図1 (a) 六角形配向ガイドにおける自己組織化構造の模式図。(b, c) PMMA相を除去した後に残存したPS相
の直上走査電子顕微鏡(SEM)像;(b)直角配向ガイド。(c)六角形配向ガイド。(d)エッチング後のパターンの
直上SEM像。スケールバーはすべて200 nm。
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