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わたしたちは物の表面の光沢や明るさ,透明感などを簡単に見わけることができます.この質感知覚の能力は脳のどのような情報処理に基づくのでしょうか? 光沢と明るさ われわれはMITと共同で,人間の脳は,画像のもつ単純な統計的性質-輝度ヒストグラムの歪みの情報から表面の光沢感や明るさを知覚していること,さらにそのような情報が低次の視覚メカニズムで取り出せるものであ ることを明らかにしました.
光沢のあ る表面の画像の輝度ヒストグラムは明るい方向になだらかに広がる歪みをもち,マットな表面のヒストグラムはその逆の歪みをもつ傾向があります.人間の知覚する光沢や明るさも,この歪みぐあ いとよく相関します.さらに,ヒストグラムを人工的に歪めると,それに応じて見かけの光沢や明るさが変化します. ヒストグラムの歪み情報は,低次の視覚神経メカニズムによって簡単に取り出すことができます.われわれが発見した新しい錯視(質感残効 [デモムービー])は,そのようなメカニズムの出力が実際に光沢や明るさの知覚に結びつくことを示しています. 透明感・半透明感 食べ物や人間の肌など多くの自然な表面には独特の半透明感があります.私たちは,この半透明感も意外と単純な画像の特徴に基づいている可能性を明らかにしました.
不透明な表面の画像と比べて半透明な表面の画像では陰影がぼけたり薄くなる傾向があります.さらに透明度が高くなると陰影の明暗が反転することもあ ります.ただしハイライトの形や強さは透明でも不透明でも同じです.人間はハイライトと陰影のコントラストの関係を手がかりに透明感を知覚していると考えられます.実際,不透明な表面の画像のハイライト以外の部分のコントラストを下げたり反転させるだけでも表面は半透明なものに見えます. 画像処理で質感を制御する 光沢感や透明感が二次元の画像のなかに隠された情報に基づいていることがわかると,逆にそうした特徴を操作するだけで質感を変えてしまうことも可能になります.
左は石のような不透明な物体に,中央はゼリーのような透明感のあ る物体に,右は金属のような物体に見えます.ゼリーと金属は,実は左の物体の映像を単純なルールに従って変換しただけのものです(*1).現代のCGでは質感を再現するために非常に複雑な物理シミュレーションを用いますが,脳の情報処理の様式を参考にすると極めて単純なやり方で質感をコントロールできるかもしれません. *1 左の映像は,Stanford Computer Graphics Laboratoryにより公開されている3DデータをもとにレンダリングされたCG画像です.ふつうの写真からも変換はできますが,うまくいかないこともあ ります.また,変換にはいろいろな方法があります. 質感脳情報学 私たちがおこなってきた研究が一つの契機となり質感の脳科学研究が盛んになりつつあります.本邦でも,今年度より新学術領域研究「質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究」がスタートしました.
文献 (抜粋) 本吉勇 (2008). 質感知覚の心理学. 心理学評論, 51, 235-249. Motoyoshi, I.& Matoba, H. (2012). Variability in constancy of the perceived surface reflectance across different illumination statistics. Vision Research, 53, 30-39. Yang, J., Otsuka, Y., Kanazawa, S., Yamaguchi, M.K. & Motoyoshi, I. (in press) Perception of surface glossiness in 5- to 8- month old infants. Perception, XX, XX-XX. Yoshida, K., Motoyoshi, I., Fukuda, K., Uchikawa, K. (2011). Visual perception of surfaces with transparent layers. Journal of Vision, 11(15): 65 [Optical Society of America Fall Vision Meeting]. Motoyoshi, I. (2010). Highlight-shading relationship as a cue for the perception of translucent and transparent materials. Journal of Vision, 10(9): 6, 1-11 [PDF] Motoyoshi, I., Nishida, S., Sharan, L. & Adelson, E.H. (2007). Image statistics and the perception of surface qualities. Nature, 447, 206-209. Motoyoshi, I., Nishizawa, T. & Uchikawa, K. (2007). Specular reflectance and the perception of metallic surfaces. Journal of Vision 7, 451a [Annual Meeting of Vision Sciences Society 2007]
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