「スイッチするジフェニルポリシラン」

Editor's Choice ―  Science, 287 (2000) 2117.

 

スイッチ、メモリ機能を有する高分子の研究が盛んである。分子構造 の修飾と最適化によりオプトエレクトロニクス特性の制御が容易であり、大面積薄膜 形成性に優れているからである。光学活性高分子は一般に右巻と左巻の2つのらせん 構造を安定に有していることがある。もし外部のエネルギーによって、らせん巻性を 右から左、左から右に変換することができるならば、光学活性スイッチやメモリとし ての応用の可能性が生まれてくる。最近私たちは、構造の最適化によって光学活性な ポリジフェニルシランの優先するらせん構造を外部エネルギーによって制御できるの ではないかと期待した。例えば、円偏光を発する電界発光素子や円偏光フィルター、 キラル分子識別半導体材料として有用である。私たちは、特別の組成を有する光学活 性なポリジフェニルシランが温度によって可逆的ならせん反転を起こすことを見い出 した。−10℃以下では、ポリシランは負の、−10℃以上では、正のコットンCD シグナルを与える。




[1] J. R. Koe, M. Fujiki, and H. Nakashima, J. Am. Chem. Soc. 121 (1999) 9734-9735.
[2] J. R. Koe et. al., Chem. Commun. 2000, 389-390 (2000).