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カフェウォール錯視(Cafe Wall Illusion)

グレーの細い線(モルタル)は実際は水平なのに、傾いて見える。このような錯視を
カフェウォール錯視と呼ぶ(Gregory & Heard, 1979, Perception



カフェウォール錯視(Cafe Wall Illusion)のモデル

視覚系にはいろいろな方位(線の傾き)に応答する神経細胞がある
事が知られている。このような神経細胞群のことを方位検出器と呼ぶ。

私たちのシミュレーションの結果、カフェウォール図形における水平の
グレー線に対して最も強い応答を示す方位検出器は、水平に同調する
検出器ではなくて、少し斜めに傾いた方位に同調する検出器であることが
わかった。V1の複雑細胞の働きに基づくHeeger(1992)の方位エネルギー
モデルを利用したシミュレーションから、傾いた方位に同調する検出器
からの出力(方位エネルギー,)は、水平の方位検出器からの出力よりも
約1.5倍大きくなることがわかった(Takeuchi, 2005参照)。
 
以下の画像は、方位検出器 G(x,y)、方位検出器からの出力 E(x,y)、
カフェウォール画像 I(x,y)を順に示している。

図にあるような左斜め下の傾きに同調する方位検出器 G(x,y) からの
出力 E(x,y)は、上から1本目と3本目のグレー線のところで大きくなった
(真中の図では、色が白いほど出力 E(x,y)が大きいことを示している)。

私たちの知覚はこのような神経細胞の応答と対応しており、このグレー線
は左斜め下に傾いて見える。



さらに以下の図では、左斜め上の傾きに同調する方位検出器G(x,y)
と、その出力E(x,y)を示している。上の場合と異なり、上から2本目(真ん中)の
グレー線のところで最も強い出力がでていることがわかる。

そして実際に、この2本目のグレー線は左斜め上に傾いて見える。



これらのシミュレーションの結果から、カフェウォール図形において見られる
傾きの錯視は、方位検出器の出力から予測できることがわかった。

さらに、このような方位検出器からの出力は、方位検出器が同調する
空間周波数に依存することがわかった。同調する空間周波数が低いほど、
検出器の出力から予測される錯視の強さ(グレー線の見かけの傾きの
大きさ)が大きい。

以下の映像では、方位検出器の方位が変わるごとに、カフェウォール
画像に対する応答が変化していく様子が示されている。検出器の方位が
水平から少しずれているときに、グレー線の位置における応答が最大に
なることが、映像からわかる。

映像(AVI) No.1: [低空間周波数に同調する方位検出器からの出力]
映像(AVI) No.2: [中空間周波数に同調する方位検出器からの出力]

映像(AVI) No.3: [高空間周波数に同調する方位検出器からの出力]


実際に知覚されるグレー線の傾きは、低空間周波数に同調する方位
検出器の応答に基づく予測よりも遙かに小さい。したがって、異なる
空間周波数に同調する方位検出器間の抑制的な相互作用により、
カフェウォール錯視が知覚されると考えられる。

実際に、薄明視下や周辺視など、高い空間周波数に同調する検出器の
感度が落ちる状況では、カフェウォール錯視の錯視量(見かけの傾きの
大きさ)は大きくなる(Takeuchi, 2005)。このように、カフェウォール 錯視
が知覚される原理は、脳の初期視覚系に存在する方位検出器の働きから
予測されるものであると考えられる。

参考文献:

Takeuchi, T. (2005) The effect of eccentricity and the adapting level on
the Cafe Wall Illusion. Perception & Psychophysics, 67, 7, 1113-1127[PDF] 


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