DNAと金微粒子によるカーボンナノチューブ複合体の合成

Goo-Hwan Jeong、鈴木哲、小林慶裕
機能物質科学研究部

 カーボンナノチューブ(CNT)は優れている物理的・化学的・電気的特性から様々な分野への応用が期待されているが、現在、構造(直径、らせん度)選択的合成は実現していないため、合成されたCNTに原子・分子等を導入することによって電子構造を制御する研究が活発に行われている[1]。そこで、我々はCNTベースの電子デバイスやバイオセンサーなどへの応用を目指して、自己組織結合特性を持つDNAと金微粒子との複合体を合成し、それを用いて、CNTベースの新規複合構造体を制御性よく合成する研究を行っている。
 CNTの合成触媒としては、従来の薄膜触媒ではなく、直径6nmの鉄微粒子を内包した蛋白質であるフェリチンを利用した。さらに、Fe代わりにCo微粒子を内包したCo-フェリチンも初めて利用し、均一径を持つCNT成長を試みた。Si,SiO2柱パターン基板上にフェリチンを均一分散させ、メタンを炭素源としたCVD法を用いて成長した結果、図1(a)に示すように、柱パターン間を繋ぐ架橋単層CNTを成長できた[2]。またRaman分光測定結果[図1(b)]から、成長したCNTの結晶性は高く、径も1.1nm程度であることがわかる。
 CNTのDNA/金微粒子複合体による修飾を行うため,CNTを硝酸及びAPTES (aminopropyltriethoxysilane)で処理し、CNT側面にDNA修飾の起点となるアミノ基を導入した。DNA/金微粒子複合体はチオール化DNAを直径5nmの金微粒子と混合して合成し、それを酸・APTES処理した架橋CNTに滴下することによって表面修飾を行った。図2は金微粒子[(a)、(b)]あるいはDNA/金微粒子複合体(c)によって表面修飾された架橋CNTの電子顕微鏡像である。CNT表面に修飾される金微粒子の密度は修飾時間や金微粒子濃度で制御できる。また、DNA/金微粒子によって修飾された架橋CNTからはRamanスペクトルの変化が観測されている[3]。このようなCNT/DNA/金微粒子の新規複合体の電気的及び光学的特性は本来のCNTとは異なり、電子・光学分野への応用が期待される。
[1] M. Zheng et al., Science 302 (2003) 1545-1548.
[2] G.-H. Jeong et al., J. Am. Chem. Soc., submitted 2005.
[3] G.-H. Jeong et al., MRS 2005 Spring Meeting, San Francisco, March 2005.

図1 

Co-フェリチンから成長した架橋CNT(a)電子顕微鏡像、(b)Raman測定結果

  図2 
(a)、(b)密度制御された金微粒子の様子、(c)CNT/DNA/金微粒子の新規複合体


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