デュアルピッチPPLN導波路を用いたキャリアエンベロープオフセット信号の高効率検出

日達研一 石澤淳 遊部雅生
量子光物性研究部

 キャリアエンベロープオフセット(CEO)周波数制御光周波数コムは超精密分光や波形整形の分野で飛躍的な進歩をもたらした。我々は位相変調方式による25 GHzモード間隔光周波数コムの研究を進めていて、モード同期法(周波数間隔 < 数百 MHz)と比べると、各モードが分離可能という利点がある。周波数安定化には、1オクターブ帯域のスーパーコンティニューム(SC)光を利用するf -to-2f 自己参照干渉法(SRI) [1]が通常用いられているが、位相変調方式ではCWレーザの中心周波数から離れるにつれて位相雑音が大きくなるため、この方法は難しい。そのため、周波数安定化に2/3オクターブ帯域のSC光を用いる2f -to-3f SRIに着目した。SC光発生用光源にファイバーレーザ、3倍波生成にデュアルピッチ(DP)の周期分極ニオブ酸リチウム(PPLN)リッジ導波路を用いたところ、高SNRで(> 30 dB) CEO干渉信号検出に成功した。
 DP-PPLNデバイスは、2つの異なる疑似位相整合長(Λ1, Λ2)を持ったリッジ導波路である[図1(a)]。ピッチサイズΛ1の第1セグメントでSC光周波数成分f1の2倍波を生成し、ピッチサイズΛ2の第2セグメントでSH光(f2)とSC光成分(f1’)との和周波を取る。導波路による光の閉じ込めと、ピッチサイズを変化させることにより1つのデバイスで3倍波を生成できる為、高効率な波長変換を行える[2]。
 CEO信号検出は、ファイバレーザ中の出力を高非線形性ファイバに入射することでSC光(〜300 mW)を発生させ、ダイクロイックミラーで長・短波長成分に分離する。SC光短波長成分(〜1200 nm)の2倍波をSP-PPLNで、長波長成分(〜1800 nm)の3倍波をDP-PPLNで生成した後、2つの干渉信号をフォトディテクタに入れたところ、30 dB以上のSNRでCEO信号を検出した[図1(b)]。今後は位相変調方式光源へこの手法を適用し、CEO周波数安定化を目指す。

[1] A. Ishizawa et al., Opt. Express 16 (2008) 4706.
[2] K. Hitachi et al., Electron. Lett. 49 (2013) 145.
 

図1  (a) DP-PPLN導波路の概念図、(b) CEO信号の検出。

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