Si-Ge-石英モノリシックプラットフォーム上に集積された
22-Gbit/s × 16-ch WDMレシーバ

西英隆1,2 高橋礼1,2 開達郎1,2 土澤泰1,2 福田浩1,2
武田浩太郎1,2 石川靖彦3 和田一実3 山田浩治1,2
1ナノフォトニクスセンタ 2マイクロシステムインテグレーション研究所 3東京大学

 将来の光通信網におけるネットワークオペレーションの省エネルギー化に向けて、波長分割多重(wavelength-division multiplexing, WDM)技術を基にしたフレキシブルな帯域割当技術が検討されている。そのためのデバイス技術として、シリコン(Si)フォトニクス技術による超小型で低コストな光-電気集積型WDMレシーバの実現が期待されている。今回我々は、NTT独自のSi-ゲルマニウム(Ge)-石英モノリシック集積WDMレシーバを実現し[1]、さらにこれを用いて長距離伝送実験を行った。
 図1に作製したWDMレシーバの上面図を示す。Δ = 〜3 %のシリコン酸化物(SiOx)導波路によって作製された16 ch-200 GHz間隔のアレイ導波路回折格子(AWG)波長フィルタの出力導波路は、スポットサイズ変換器を介してシリコン細線導波路およびGeフォトディテクタ(PD)に接続され、これらのデバイスがモノリシックに集積されている[2]。SiOx導波路は、低損失かつ温度・偏波依存性が小さいため長距離光通信用パッシブ光デバイスに求められる厳しい仕様にも適応可能である。AWGのSiOxコアとSiO2オーバークラッドはECRプラズマCVD法によって200℃以下で堆積され、Geデバイスに熱損傷を与えることなくSiOx-AWGが作製されている。GeはUHV-CVD法によって成長した[3]。作製したデバイスの面積は1 cm2である。
 作製したデバイスの特性を以下に示す。SiOx-AWGの挿入損失は5.1 dBであった。GePDの特性は、暗電流が-2 V下で245 nA、感度が1.2 A/W、3-dB帯域幅は15 GHz以上であり、20 Gbit/s以上の信号受信が可能である。図2に感度スペクトルを示す。全chにおいて動作を確認し、中心chでのファイバ-PD感度は0.29 A/W、チャネル間クロストークは-22 dBであった。
次に12.5-Gbit/s NRZ PRBS 231-1入力信号を、17 ps/km/nmの分散を有するシングルモードファイバに入力し、20、40、60 km伝送を行った後、高NAファイバのバットカップルによってWDMレシーバチップに入力した。図3に測定したビットエラーレート(BER)曲線を示す。40 kmまでのエラーフリー伝送を確認した。40 km伝送時、AWG入力パワーで規格化したBER=10-9での受光感度は-6.8 dBmであった。これらの実験は室温環境下でデバイスの温度制御なく行われた。SiフォトニクスWDMレシーバを用いて、世界に先駆けて10 Gbit/s級長距離伝送実験に成功した。我々は電気回路との集積化にも成功しており[1]、今後大幅な受光感度の改善が期待できる。

[1] H. Nishi et al., Opt. Express 20 (2012) 9312.
[2] T. Tsuchizawa et al., J. Sel. Top. Quantum Electron. 17 (2011) 516.
[3] S. Park et al., IEICE Trans. Elect. E91-C (2007) 181.
 

図1  WDMレシーバの上面図。
図2  感度スペクトル。
図3  BER曲線。

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