2層系ν=2量子ホール状態におけるスピンダイナミクス

2層系ν=2量子ホール状態には、層内の強磁性的相関と層間の反強磁性的相関を制御することによって様々な磁性相が現れる。 2層が独立な場合、強磁性相が現れる。 層間の相互作用を強くしていくと、傾角反強磁性相、スピンシングレット相へと相転移する。 我々は核スピン緩和測定によって傾角反強磁性相におけるスピンの揺らぎが低温極限においても凍らないことを明らかにした。 この結果は、2次元系におけるギャップレスモード(ゴールドストーンモード)の証拠である。
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凍らないゆらぎ from "this week in Science: 21 July 2006"

通常の強磁性、反強磁性体では、強い結晶場によって磁化は特定の結晶方位にピン止めされてしまう。 これに対して、高移動度2次元電子系において実現する量子ホール系ではそのような摂動はないため、 2次元系の低エネルギー物理を研究するのに理想的な系であるといえる。 我々は2次元電子系が近接配置された2層系においてスピンの自発的対称性の破れについて研究を行い、電子スピンの低周波揺らぎは 低温極限においても凍らないことを明らかにした。 この結果は2次元系における傾角反強磁性状態の明確な証拠である。



(左図) 核スピン緩和測定例。 傾角反強磁性状態が起きていると考えられている強磁性相(F)とスピンシングレット相(SS)の間で核スピン緩和が非常に速くなっている。 この結果は低周波揺らぎを伴う面内スピンの反強磁性秩序の存在を示している。 (右図) 2層量子ホール系における磁気抵抗。 点線に沿って両層の電子密度差が、破線に沿って両層あわせた電子密度が変化している。