窒化物半導体面発光型レーザダイオード

赤坂哲也 西田敏夫 小林直樹 牧本俊樹
機能物質科学研究部

 AlN、GaN、InN、あるいは、それらの混晶である窒化物半導体はバンドギャップの大きな直接遷移型半導体であるため、可視から紫外域の発光素子材料として魅力的である。窒化物半導体を用いたレーザダイオードのミラーは、へき開やドライエッチングにより形成されている。一方、本研究ではより高性能なミラーとなる選択成長によるマイクロファセットを用いて、InGaNベースの水平共振器型面発光レーザ、horizontal cavity surface emitting laser diode (HCSELD)、を作製した [1]。 この HCSELD はファブリ・ペローレーザと外部ミラーを組み合わせており、この外部ミラーでレーザ光を斜め上方向に跳ね上げることができる。また、共振器ミラーと外部ミラーは、それぞれ、選択成長で形成した{11-20} マイクロファセットと{11-22}マイクロファセットで構成されている。さらに本研究では、このHCSELDの室温における電流注入発振を達成した。
 図1にInGaNベースHCSELDの鳥瞰SEM像を示す。共振器ミラーと外部ミラーは、それぞれ、選択成長したMgドープGaN薄膜の{11-20}マイクロファセットと{11-22}マイクロファセットで構成されている。{11-20} マイクロファセットはSiC基板に対して完全に垂直であり、{11-22}マイクロファセットは58°の角度を持つ。したがって、共振器ミラーから水平に射出されたレーザ光は基板に対して64°の角度で外部ミラーにより跳ね上げられる。本レーザは室温で電流注入発振した。発光スペクトルを図2に示す。発振しきい値を超えると、スペクトル幅の狭鋭化が起こっている。また、しきい値近傍で光出力−電流曲線の非線形な変化も観測し、レーザ発振を確認した。これは、窒化物半導体を用いた面発光型のレーザとして世界初の電流注入発振である。

[1] T. Akasaka et al., Appl. Phys. Lett. 84 (2004) 4104-4106.

図1 
InGaNベースHCSELDの 鳥瞰SEM像
図2
発振しきい値前後の発光スペクトル


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