通信波長帯における energy-timeもつれ光子対の発生

 

本庄利守1 武居弘樹1 井上恭2 
1量子光物性研究部 2大阪大学/NTTリサーチプロフェッサー

 光ファイバを用いた量子通信において、通信波長帯でのもつれ光子対の発生技術は、不可欠な要素である[1、2]。我々は、導波路型PPLNを用いてenergy-timeもつれ光子対の発生を行い、PLC(planar ligtwave circuit)によるMach-Zehnder干渉計を用いて2光子干渉実験に成功した[3]。
 図1に実験構成を示す。半導体レーザからのCW光(波長780nm)をポンプとして、導波路型PPLNに入れた。PPLNにおいて、自然放出パラメトリック下方変換によりもつれ光子対を発生させた。PPLNからの出力光を、ポンプ光の除去および帯域を制限のために、780nm抑圧フィルターと1.5μm帯狭帯域バンドパスフィルターを通過させた。その後、50:50カプラにてシグナルとアイドラーを分離し、それぞれ光路差20cmのPLC Mach-Zehnder干渉計を通過させた。PLC Mach-Zehnder干渉計の位相差は、干渉計の温度を制御することにより正確かつ安定に調整することが可能である。そして、それぞれの干渉計の片側の出力に設置したInGaAsによる光子検出器を用いて、シグナル側の干渉計温度を一定にしたまま、アイドラー側の干渉計温度を変化させて、同時係数を測定した。
 図2が実験結果である。△印が実験的で求めた各温度における同時係数である。実験を通して、各光子検出器のカウントレートは、1700cps程度で一定であった。カウントレートが一定であるにもかかわらず、干渉計の温度変化に伴って、図2のような2光子干渉波形が観測された。光子検出器のゲートあたりの平均光子数0.12で実験を行い、明瞭度は77.3%を得た。この結果は、光子対発生率のポアソン性、ロス、検出器の暗計数を考慮すると理論値とほぼ合致し、ノイズ光子発生のないもつれ光子対が発生できていることを確認できた。
[1] I. Marcikic et al., Phys. Rev. Lett. 82 (1999) 2594.
[2] H. Takesue et al., Phys. Rev. A 72 (2005) 041804(R).
[3] T. Honjo et al., CLEO/QELS 2006, (2006) JTuA5.

図1 実験系
図2 2光子干渉測定結果

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