InAs ナノワイヤチャンネル電界効果トランジスタ

Guoqiang Zhang 舘野功太 中野秀俊
量子光物性研究部

 ナノワイヤは電子デバイスやフォトニクスからバイオや医療の分野まで幅広く応用が期待されている[1]。特に半導体ナノワイヤはナノスケールの電子デバイスにおいて重要な要素となると考えられる。InAsは高い移動度を有するので高速デバイスとして有望である。我々はナノワイヤチャンネル電界効果トランジスタ(FET)を再現良く作製するプロセス技術を立ち上げ、InAsナノワイヤチャンネルFETを作製してその特性を評価した[2]。
 低圧(76 Torr)の有機金属気相成長用反応系において金コロイド粒子を触媒としたInAsナノワイヤのVapor-liquid-solid成長を行った[3]。原料はトリメチルインジウムとアルシンを用いた。成長したInAsナノワイヤは積層欠陥のないWurtzite構造であることを透過電子顕微鏡により確認した。このナノワイヤをSiO2/Si(SiO2の厚さ:500 nm)の基板上に分散した後、Ni/Au電極を電子ビームリソグラフィにより形成し、高速昇温炉を用いて300 ℃ 30秒アニールを行った。図1にいくつかの電極を有したナノワイヤチャンネルFETを示す。
 作製したInAsナノワイヤチャンネルFETはSi基板層をゲート電極として用い、室温DC特性を半導体パラメータアナライザで評価した。図2に2端子と4端子のId-Vd特性を示す。ナノワイヤの抵抗を比較すると、コンタクト抵抗は小さく、抵抗率は2.0×10-7 Ω・cm2であった。図3はドレイン電圧を変えたときのId-Vg特性である。ゲート電圧を変えたときの特性の変化からナノワイヤはn型であることが分かる。このナノワイヤチャンネルFETの最大伝達コンダクタンス(gm)はVd が0.1 V のときに0.24-0.36 µS の範囲であった。FETデバイスにおいては規格化伝達コンダクタンス g*m = gm/wgwg はチャンネル幅)は重要な性能指数の1つである。g*mは0.1 V において2.5-3.7 mS/mm の範囲であった。FET特性から電子濃度(N)と移動度(μ)はN=2.3-5.8×1017 cm-3μ=1.29-1.53×103 cm2V-1s-1であった。今後さらなる特性向上と、機能的な量子デバイスを目指す。
 本研究は科学研究費補助金基盤研究(A)(No. 16206003、18310074)の援助を受けて行われた。

[1] Y. Li, et al., Mater. Today 910) (2006) 18; C. Thelander, et al., ibid. 910) (2006) 28;P. J. Pauzauskie and P. Yang, ibid. 910) (2006) 36.
[2] G. Zhang, et al., ISCS2007, Kyoto, Japan, Oct. 2007, p. 142.
[3] G. Zhang, et al., J. Appl. Phys. 103 (2008) 014301.

図1  InAs ナノワイヤチャンネルFET
 
図2  2端子と4端子におけるVd-Id 特性  
図3  ドレイン電圧を変えたときのId-Vg 特性

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