シリコン細線導波路による高品質もつれ光子対発生

原田健一 武居弘樹 福田 浩* 土澤 泰* 渡辺俊文*
山田浩治* 都倉康弘 板橋聖一*
量子光物性研究部 *マイクロシステムインテグレーション研究所

 近年、シリコン細線導波路 (SWW) の自然放出四光波混合を用いた1.5 µm帯もつれ光子対発生の研究が盛んに行われている[1]。SWWからは、従来のもつれ光子対源に比べて非常に高品質なもつれ光子対を発生させることが可能である。今回この導波路を用いて明瞭度95%以上の二光子干渉波形を観測することができた[2]。
 SWWはコアにSi、クラッドにSiO2を用いており、3 µm SiO2層上にSi層を持ったSOI (silicon-on-insulator) 基板上に形成される。ナノスケールの極小コア径を有するため、導波路内での光強度を非常に強くすることが可能である[3]。これにより、1 cm程度の短い導波路でも高い効率で自然放出四光波混合過程を引き起こすことができる。
 図1に、時間−位置もつれ光子対発生の実験系を示す。波長1551.1 nmの連続光を光強度変調器(IM) によりパルス幅90 ps、パルス間隔1 ns、繰り返し周波数100 MHzの2連パルスに変調し、光増幅器によって増幅した後にSWWに入射する。今回用いた導波路は460×200 nmのコア径を有し、長さ1.15 cm、導波路損失1.0 dBである。この導波路中の自然放出四光波混合により発生した時間−位置もつれ光子対は、fiber Bragg grating (FBG) によりポンプ光が除去された後、arrayed waveguide grating (AWG) によりポンプ波長から±3.2 nm離れたシグナル光子とアイドラー光子に分離され、それぞれ1-bit遅延PLC Mach-Zehnder干渉計に入力される。PLC干渉計の位相差は、干渉計の温度を制御することによって調整することができる。PLC干渉計から出力された光子は100 MHzのゲートモードで動作する光子検出器(SPD1、2) によって同時計数計測される。
 シグナル側の位相差を固定し、アイドラー側の位相差を変化させて同時計数を測定することで二光子干渉波形を観測することができる(図2)。2種類の波形はシグナル側の非直交の2基底に対する測定結果を表しており、明瞭度はそれぞれ96.3% (solid line)、95.2% (dashed line)であった。これにより1.5 µm帯において高品質もつれ光子対が発生可能であることを確認した。

[1] H. Takesue et al., Appl. Phys. Lett. 91 (2007) 201108.
[2] K. Harada et al., Opt. Express 16 (2008) 20368.
[3] T. Tsuchizawa et al., IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron. 11 (2005) 232.
 

図1  時間−位置もつれ光子対発生の実験系。
PC: polarization controller, FM: focusing module, BPF: band pass filter, TIA: time interval analyzer.
 
図2  二光子干渉波形。

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