有機半導体DNTTをベースとしたMISキャパシタのACアドミッタンス

林 稔晶
量子電子物性研究部

 有機半導体dinaphtho[2,3-b:2’,3’-f]thieno[3,2-b]thiophene (DNTT)をベースとした金属・絶縁体・半導体キャパシタ(MISキャパシタ)のアドミッタンスY (= G + jωC)を測定し、このデバイスにおけるキャリア・ダイナミクスの周波数依存性について研究した[1]。MISキャパシタのデバイス構造はAl (50 nm) /AlOx (4 nm) /DNTT (30 nm) /Au (90 nm)である。図1にデバイスの光学顕微鏡写真を示す。Yは、インピーダンス測定器のLow端子をAu電極に、High端子をAl電極につないで測定した。図2はDC電圧を–2.5 V印加したときのY/ωの虚部(C)と実部(G/ω)の周波数スペクトルである。図2からわかるように、CのスロープはG/ωのピークに対応しており、CG/ωはお互いに相補的な関係にあることがわかる。
 次に、異なるコンタクト形状をもつ様々なデバイスを測定した。その解析によると、高周波ピークPHのピーク高さはトップコンタクトの面積に比例し、低周波ピークPLのピーク高さはAuに覆われていないAlゲート上のDNTTの面積に比例することがわかった。このことから、PHはトップコンタクトからその直下のDNTT/絶縁体界面へのキャリア注入に起因しており、PLはトップコンタクト直下からAlゲート上のDNTT全体に拡がるドリフト電流に起因していることがわかった。また、キャリアの拡散方程式を数値的に計算することによって、PLを非常によく再現することができることがわかった。このフィッティングにおいて移動度はパラメータの1つとして用いられる。各ゲート電圧におけるスペクトルをフィッティングすることによって、蓄積領域(–2.5 V)から閾値下領域(–1.1 V)までの移動度を求めることができた。

[1]
T. Hayashi, N. Take, H. Tamura, T. Sekitani, and T. Someya, J. Appl. Phys. 115 (2014) 093702.
図1
 DNTTをベースとしたMISキャパシタの光学顕微鏡写真。
図2
 MISキャパシタのキャパシタンス・スペクトル(a)、およびコンダクタンススペクトル(b)。