深紫外発光半導体である高Al組成AlGaNのバンド間遷移は、光の電場Eがc軸方位と平行な場合(E||c)に許容となる。この光学遷移選択則により、AlGaNでは、C面からの発光は弱く、M面やA面からの発光が強くなるが(図1)[1]、従来、AlGaNは良質な結晶が比較的得やすいC面上に成長されてきたため、AlGaN系深紫外発光ダイオード(LED)の光取り出し効率が本質的に低かった。さらに、極性面であるC面上に形成したAlGaN量子井戸では、量子井戸面と垂直方向に内部電場が発生する。この内部電場により、電子と正孔が空間的に分離する量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)が生じるため、発光再結合確率が低下する(図2)。一方、非極性面であるM面やA面上に形成した量子井戸では、量子井戸面と垂直方向には内部電場が発生しないため、高い発光再結合確率が期待される[2]。本研究では、非極性M面上にAlGaN量子井戸を成長し、その発光特性を極性C面AlGaN量子井戸と比較した[3]。
非極性M面および極性C面AlGaN 量子井戸は、M面およびC面AlN基板上にMOVPE法を用いてエピタキシャル成長した。図3はそれらAlGaN量子井戸のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルである。M面AlGaN量子井戸はC面AlGaN量子井戸よりも強い深紫外発光を示した。偏光特性の評価から、M面およびC面AlGaN量子井戸の発光はともにE||c偏光しているが、M面のほうがC面よりも強く偏光していることがわかった。また、C面AlGaN量子井戸の発光波長はM面AlGaN量子井戸よりも長波長側にシフトしている。これは、C面AlGaN量子井戸ではQCSEに由来するバンド傾斜により、QCSEの影響がないM面AlGaN量子井戸よりも、遷移エネルギーが減少(発光波長が長波長化)するためと考えられる。非極性M面AlGaN量子井戸では、(1)強いE||c偏光性、(2)QCSEの影響がない、の2点により、従来の極性C面AlGaN量子井戸よりも強い深紫外発光が得られると言える。
本研究の一部は科研費の援助を受けて行われた。
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