Theoretical Quantum Physics Research Group


私たちのグループの目標は、 量子物理学や量子情報処理に関する、革新的かつ先端的な理論研究を行う事です。また同時に、私たちは、それらの理論を量子テクノロジーの創出へ繋げることも目指しています。主な研究分野について以下で解説します。

量子力学の基礎

量子論基礎は量子情報科学の著しい発展を促すことがあります。逆に、量子情報科学で得られた知見が、量子論の基本的側面の理解を手助けしてくれることもあります。

私たちは、量子論の奇妙な性質、特に量子もつれに由来する非局所性をより良く理解することを試みます。私たちの最近の研究例として、以下のものが挙げられます。
  • Masato Koashi, Koji Azuma, Shinya Nakamura, and Nobuyuki Imoto, Does "quantum nonlocality without entanglement" have quantum origin?, arXiv:1303.1269 (2013).

量子鍵配送

量子力学では、古典物理学の枠組みでは実行できないタスクが行えることがあります。そのようなタスクの一例として、任意の盗聴への耐性を有する、情報理論的安全な方法で秘密鍵を配送する「量子鍵配送(QKD)」があります。ここで得られる秘密鍵は、通常の通信上で行えるワンタイムパッドにおいて、平文を符号化・複合化するために用いられます。

QKDによって情報理論的安全性を達成するためには、ユーザーのデバイスは、QKDの理論要求通りに動作する必要があります。しかし、実際のデバイスと理論が要求するデバイスの間にギャップがある場合があり、これがセキュリティーの抜け穴やサイドチャンネル攻撃に繋がることもあります。従って、実際のQKD装置の安全性を保障するためには、そのようなギャップを埋める必要があります。

他方で、現状のQKD方式の秘密鍵生成レートや通信可能距離は制限されているため、より高い秘密鍵生成率を誇り、より長距離をカバーするような効率的なQKD方式を発見することも重要です。

私たちの研究の主な方向性として、これらの2点、つまりセキュリティーの抜け穴を埋める理論的・実験的手段の考案や、既存方式の効率を上回るQKD方式の提案があります。私たちの最近の研究成果として、以下のものが挙げられます。
  • Koji Azuma, Kiyoshi Tamaki and William J. Munro, All-photonic intercity quantum key distribution, Nature Commun. 6,10171 (2015).

  • Kiyoshi Tamaki, Marcos Curty, Go Kato, Hoi-Kwong Lo, and Koji Azuma, Loss-tolerant quantum cryptography with imperfect sources, Phys. Rev. A 90, 052314 (2014).

  • Kiyoshi Tamaki, Hoi-Kwong Lo, Chi-Hang Fred Fung, and Bing Qi, Phase encoding schemes for measurement device independent quantum key distribution and basis-dependent flaw Phys. Rev. A 85, 042307 (2012).

量子通信、量子ネットワーク、量子コンピュータ

量子力学の原理に基づく技術の開発は、21世紀を支える基礎となる可能性があります。実際、これらのリソースは、無条件に安全な通信や、大きな整数の素因数分解、複雑な系のシミュレーションなど、従来の情報処理では行うことが困難なタスクの実行に寄与します。この量子情報処理という広範な分野は、量子計測学、量子イメージング・センシング、量子通信や量子コンピュータなど、様々な領域に分割されます。

私たちは量子中継や量子ネットワーク、そして量子コンピュータなどの量子情 報処理に必要となるデバイスの構成法についての研究を行っています。私たちの最近の成果のいくつかを以下に挙げます。
  • Koji Azuma, Kiyoshi Tamaki, and Hoi-Kwong Lo, All photonic quantum repeaters, Nature Commun. 6, 6787 (2015).

  • Koji Azuma, Hitoshi Takeda, Masato Koashi, and Nobuyuki Imoto, Quantum repeaters and computation by a single module: Remote nondestructive parity measurement, Phys. Rev. A 85, 062309 (2012).

  • W. J. Munro, A. M. Stephens, S. J. Devitt, K. A. Harrison and Kae Nemoto, Quantum communication without the necessity of quantum memories, Nature Photonics 6, 777 - 781 (2012).

ハイブリッド量子系

現状では、量子計算や量子通信、あるいは量子センシングなどの量子情報処理に必要とされる特性を、「単独で」全て備える物理系は見つかっていないとされます。例えば、複数量子ビットに対する演算能力に長けた物理系は、コヒーレンス時間が短い傾向にありますし、コヒーレンス時間が長い物理系は逆に、複数量子ビットに対する演算性能に制限をもつ傾向があります。しかし、各々のクラスの量子系をハイブリッド化すれば、各々の系のベストな性質を利用することが可能になります。例えば、共振器中の窒素—空孔複合体中心(NV中心)は、コヒーレンス時間の長い核スピンと、光と結合する電子スピンを持ち、2量子ビット演算を自然に施すことができます。このようなハイブリッドアプローチは、離れたノードのネットワーク化による分散型情報処理を、自然に達成可能なものとします。超伝導回路と電子スピンの集団系も、そのようなハイブリッド系の一例になっています。ここでは、超伝導量子ビットが情報操作を容易に行う一方で、長い保存時間を持つスピン集団が量子メモリとして機能します。

私たちのグループは、このようなハイブリッド系の様々な側面、例えば、それらをどのように実現し、モデル化し、利用するかについて理論的に探求しています。最近の成果のいくつかを以下に挙げます。
  • Kae Nemoto, M. Trupke, S. J. Devitt, A. M. Stephens, B. Scharfenberger, K. Buczak, T. Nobauer, M. S. Everitt, J., Schmiedmayer, and W. J. Munro, Photonic Architecture for Scalable Quantum Information Processing in Diamond, Phys. Rev. X 4, 031022 (2014).

  • Ashley M. Stephens, Jingjing Huang, Kae Nemoto, and William J. Munro, Hybrid-system approach to fault-tolerant quantum communication, Phys. Rev. A 87, 052333 (2013).

  • X. Zhu, Y. Matsuzaki, R. Amsuss, K Kakuyanagi, T. Shimo-Oka, N. Mizuochi, Kae Nemoto, K. Semba, W. J. Munro and S. Saito, Observation of dark states in a superconductor diamond quantum hybrid system, Nature Commun 5, 3424 (2014).