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2006年03月30日

マクロな超伝導電流と単一光子の量子もつれ制御に成功

- 量子コンピュータのCPU構成法に道 -

NTTとJSTは、超伝導材料からなる電気回路を流れる電流と、1個の光子とで形成された量子もつれ状態の制御に世界で初めて成功しました。量子もつれ状態の制御技術は、量子情報処理の基本として不可欠な技術です。従来、量子もつれは、原子と光子というミクロな系において観測されることは知られていましたが、今回の研究成果によって、電気回路を流れるマイクロアンペアというマクロな超伝導電流と光子の組み合わせでも量子もつれを実現可能であることが初めて実証されました。操作性の点でより有利なマクロな超伝導電気回路を用いて単一光子との量子もつれの制御に成功したことで、量子コンピュータの実現へ近づく一歩として注目されます。

 本研究では、光子の共振器としてLC回路を採用し、超伝導電気回路(超伝導量子ビット)と十分強く相互作用するよう、同一半導体チップ上に微細加工技術を用いて作製しました(図1)。さらに、LC回路の光子のエネルギーに比べて十分低温で測定することによって、世界で初めて、光子と超伝導電流の量子もつれを示す真空ラビ振動と呼ばれる現象(図2)の観測に成功(図3)したものです。  実用的な量子コンピュータを実現するためには、複数の量子ビットを集積化してビット数を増やすことが必須です。今回考案されたLC回路と超伝導回路を用いる手法により、量子ビットの状態をコヒーレンスを保ったままLC回路の光子の状態へ移すことができるようになり、空間配置などのデバイス設計上の制約が少ないため、既存の半導体集積回路技術が活用でき、多ビット化のための研究に資するものと期待されます。これを契機に、夢の量子コンピュータの構成要素である次世代量子マイクロプロセッサ(CPU)素子の実現へ向けた研究開発の加速も期待されます。

  この研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の研究テーマ「超伝導磁束量子ビットによる量子もつれの実現」(NTT物性科学基礎研究所と東京工業大学・上田正仁教授の共同研究)によって得られたもので、米国科学雑誌「Physical Review Letters」にて、誌面の掲載に先立ちオンライン版に2006年3月31日(米国東部時間)付けで公開されます。

ニュースリリース
超伝導量子物理研究グループ

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