NTT物性科学基礎研究所

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2006年12月21日

光を1ナノ秒蓄積に成功、光速も5万分の1に

- 世界最高性能のフォトニック結晶共振器で実現 -

NTT物性科学基礎研究所は、フォトニック結晶と呼ばれる人工結晶を用いた微小共振器構造により、光を波長サイズの微小体積に1ナノ秒(ナノは10億分の1)以上蓄積し、1ナノ秒以上の大きな遅延を得ることに成功しました。これは光の伝播速度を空気中の5万分の1以下まで小さくしたことに相当します。 従来の光技術では光を蓄積したり減速したりすることは非常に困難でしたが、NTTではこれまでで最も高い光閉じ込め効果を持つフォトニック結晶共振器のデザインを見出し、高度な微細加工技術によってこの共振器をベースとした素子を作製、本成果を実現しました。今回の成果は、低消費電力で動作する光情報処理チップ、さらには光子単位で動作する量子情報処理素子の実現に向けて大きな可能性を開くものです。 この成果は、2007年1月創刊の英国科学誌Nature Photonicsに発表されます。

ニュースリリース
フォトニックナノ構造研究グループ

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図1. 作成したシリコンフォトニック結晶共振器 今回実現した光共振器構造は、シリコン基板上に直径200ナノメートル程の穴を三角格子状に配列したフォトニック結晶をベースにしています。この超小型共振器構造は、光絶縁体としてはたらく周期構造部分と直線状に穴をとり除いた線状欠陥部分から成ります。穴のない領域はフォトニックバンドギャップが存在しないため光を通し、それに隣接する穴の位置(図で色づけした部分)をわずかに(3~9ナノメートル)外側にシフトさせることにより、強い光閉じ込め効果を実現しています。

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図2. 共振器中の光子蓄積時間の直接測定 共振器への光入力を瞬間的 にオフにした場合の出力光の時間変化を直接測定したところ、共振器中に光が1ナノ秒間以上蓄積されていることが確認できました。これは共振器の閉じ込め強さを表す指標であるQ値としては120万という値に相当し、波長サイズの小型共振器としてはこれまでで最も大きなものです。

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図3. 共振器素子における光遅延時間の直接測定 さらに光パルスを入力した場合、共振器によって出力光が1.45ナノ秒遅延することが分かりました。これは共振器中で光の伝播速度が空気中の5万分の1以下になっていることに相当します。ここで得られた光の蓄積・遅延時間は波長サイズの人工構造としてはこれまでで最も長く、5万分の1という光の減速効果は従来の報告よりも二桁以上大きく、あらゆる人工誘電体構造によるスローライト材料中で最も大きなものです。