NTT物性科学基礎研究所

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2008年04月11日

微細な振動で演算を行う新しい半導体素子を開発

- 髪の毛より細いバネの「振るえる動き」でデジタル演算を可能に -

NTT物性科学基礎研究所は、半導体チップ上の、髪の毛より細い板バネの微細な振動によってデジタル演算を行うという新しい原理を用いた半導体素子を世界に先駆けて開発しました。 開発した素子の心臓部は、長さ250 μm(マイクロメートル:1 μmは百万分の1メートル)、幅85 μm、厚さ1.4 μmの小さな板バネです。この板バネが約10 nm(ナノメートル:1 nmは10億分の1メートル)という極めて小さな幅で振動する時の「周期のずれ」を、「0」および「1」のビット情報に対応させることにより、1ビットの基本的な演算を行うことに成功しました。今回開発した素子は、板バネの極めて小さな振動を用いて演算を行うことから、現在のトランジスターを基本とした集積回路に比べ、数桁小さな消費電力のコンピューターを開発できる可能性があり、省エネルギー化の要請に応えた新しい情報処理システムとしての発展が期待されます。
 今回得られた成果は、ナノマシンによるデジタル演算の「具体的な」方法を世界で初めて提案、実証したものとして、英国の科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」誌電子版(4月13日付)に掲載されます。(本研究の一部は独立行政法人 日本学術振興会の科学研究費補助金の助成を受けて行われました。)

ニュースリリース
ナノ加工研究グループ

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電極Aに小さな交流電圧を加えることで板バネに沿った力を生み出します。これにより、微細な振動を引き起こし、その運動を検出することができます。加えた電圧が2周期変化する間に板バネが「中心→上→中心→下」のように振動する状態を「0」、「中心→下→中心→上」のように振動する状態を「1」のビット情報に対応させます。

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この素子を実際にデジタル演算に用いるには、隣の板バネのビット情報を受け取り、その情報を別の板バネに引き渡す具体的な方法が必要です。今回の成果では、図1の電極Bに擬似的にビット情報を入力し、電極Aに周期信号を加えることにより板バネに振動として情報を蓄積した後、電極Cより電気信号として取り出すことに成功しました。このような素子を連結していけば、板バネでデジタル演算を実際に行うことができます。