NTT物性科学基礎研究所

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2008年11月28日

光ナノ共振器を大規模に連結させることに世界で初めて成功し、光信号を遅延

~スローライトを用いた高機能光情報処理の実現に向けて前進~

NTT物性科学基礎研究所は、フォトニック結晶と呼ばれる強い光閉じ込め効果を持つ人工周期構造を用いて、光の波長と同程度のサイズの光ナノ共振器をチップ内に大規模結合した構造を世界で初めて実現し、同構造を用いて光信号の伝播速度を減速させる事に成功しました(図1)。 

 超小型共振器の大規模結合構造は、結晶中の原子の結合構造に類似した特性を持ち、この特性から光の伝播速度を遅くする優れた媒体(スローライト導波路)と考えられています。しかしながら、多数の超小型共振器を結合させることは技術的な困難をともなうため、これまで良好な特性を持つ大規模結合構造は実現されていませんでした。NTT物性科学基礎研究所では、高精度なナノ加工技術と独自のフォトニック結晶設計手法を用いて、シリコンのフォトニック結晶中に光の波長と同程度の約0.1立方ミクロン(ミクロンは1000分の1ミリ)の光閉じ込め体積を持つ光ナノ共振器を作製。これを最大200個連結した低損失な大規模結合構造を世界で初めて実現し、この結合構造が原子の結合構造に類似した特性を持つことを実証しました。実現した結合共振器構造はこれまでのものを大幅に上回る特性を持ち、光信号パルスの伝播速度を空気中の光速に比べて約100分の1の速度まで(最大で170分の1)減速することに成功しています(図2)。  本成果は、平成20年11月23日(英国時間)に英国科学誌「Nature Photonics」のオンライン速報版で公開されました。また本成果は、JST戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究課題「フォトニックナノ構造アクティブ光機能デバイスと集積技術」(研究代表者:馬場俊彦 横浜国立大学大学院工学研究院 教授)により行われました。

ニュースリリース
フォトニックナノ構造研究グループ

図1.フォトニック結晶による大規模結合共振器の構造の概念図(上)と模式図(下)
図1.フォトニック結晶による大規模結合共振器の構造の概念図(上)と模式図(下)

フォトニック結晶は、結晶シリコンに周期的に穴(直径はおよそ200ナノメートル、ナノは10億分の1)をあけた構造をもっています。色を付けた穴の位置をわずかにずらすことによりナノ光共振器が形成され、これを多数子連結して大規模結合共振器構造を実現しました。

図2.大規模結合共振器における光パルスの伝播測定の例
図2.大規模結合共振器における光パルスの伝播測定の例

赤色は結合共振器を伝播後のパルス、緑色は比較用の直線導波路を伝播後のパルスの波形です。 (a)比較用導波路に比べて125ピコ秒(ピコは1兆分の1)のパルス遅延が得られており、この値は通過後のパルスの幅の5.8倍に相当します。(b)最も遅い伝播速度が観測された例で、空気中の光速の170分の1の伝播速度が得られています。