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2011年02月16日

マイクロマシン技術を用いたデジタル演算の新しい手法を開発

~一個の板バネだけで複数の論理演算を同時に実行~

物性科学基礎研究所は、マイクロマシン技術を用いて作製した微細な板バネを振動させ、複数の論理演算を同時に実行できる新しいデジタル演算の手法を開発しました。これは、1個の基本素子だけで論理回路をも構成できる可能性を持つ世界で初めての技術です。

通常のコンピュータでは、最も基本的な論理演算であっても複数のトランジスタが必要ですが、今回開発した手法では、マイクロマシン技術を用いて作製した厚さ1.4μm(ミクロン:1ミクロンは100万分の1メートル)という微細な板バネ素子をたった1個だけ使い、周期的な電圧を加えて発生させた約10 nm(ナノメートル:ナノは10億分の1)の微細な板バネの振動に複数のデジタル情報を異なる周波数を用いて入力する事で、複数の論理演算を同時に実行することに成功しました。

今後は、より大規模な任意論理回路への適用可能性や、動作速度、消費電力などについて確認を行い、実際のコンピュータとしての実用可能性を検証していきます。

今回得られた成果は、消費電力の低さや耐環境性の強さが期待されている「ナノマシンコンピュータ」を実現するために必要な基盤技術のひとつとして、英国の電子版科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(2月15日付)に掲載される予定です。
本研究の一部は独立行政法人日本学術振興会(東京都千代田区、理事長:小野元之)科学研究費補助金の援助を受けて行われました。

ニュースリリース
ナノ加工研究グループ

図1
図1:周波数変換による論理演算の概念図

  1. 異なるビット情報に対応するデジタル信号(AおよびB)は、異なる周波数(fAならびにfB)の交流電気信号として、素子の電極に入力されます(図中①)。
  2. 加えられた電気信号は板ばねの振動を引き起こしますが(図中②)、その際、fAならびにfBと異なる周波数の振動、fCならびにfDも生み出されます。
  3. fCの振動は、AならびにBの両方が入力されたときのみ生じ、fDの振動は、AならびにBのどちらかが入力されれば生じるため、それぞれA and BならびにA or Cの演算に対応します。
  4. 得られた振動は再び電気信号に変換され、電極から出力されます(図中③)。

図2
図2:実際の動作例

素子から出力された電気信号の周波数と信号の強さ。青色の周波数はA(図中赤色)とB(図中黒色)が入力されたときのみ出力され、緑色の周波数は、AあるいはBのどちらかが入力されたときに出力されます。これより、A and B あるいは、A or B の動作が実際に同時に実行されていることが確認されます。これは最も簡単な例であり、実験では3つの入力に対するA or (B and C)や、「多数決ゲート」と呼ばれる、より複雑な論理回路の動作を、一個の板バネ素子で同時実行することにも成功しています。