NTT物性科学基礎研究所

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2006年06月15日

電子一個の動きを捉えることに成功、単電子電流計を実現

-新型の超高感度電流計、ナノエレクトロニクスに応用-

NTT物性科学基礎研究所は、東京工業大学と科学技術振興機構と共同で、電流を運ぶ電子一個一個が、いつ、どちらの方向に動いたかが分かる、超高感度な電流測定に世界で初めて成功しました。この単電子電流計を用いれば、これまでの電流計では測ることのできなかった非常に微小な電流や、電子一個一個の動きをその場で捉えることができ、ナノ構造や単一分子を用いたナノエレクトロニクスや量子情報通信など、様々な分野での応用が期待できます。  この成果は、2006年6月16日付けで米科学誌Scienceに発表されます。

ニュースリリース
量子固体物性研究グループ

【単電子電流計のしくみ】
これまでの高感度電流計では、数万個の電子の流れがないと電流として検出することはできませんでした。本研究では、量子ドットとよばれる、電子がひとつずつしか出入りすることのできない非常に小さな半導体ナノ構造と、それに隣接する半導体ポイント接合を電荷計として用いることで、単電子電流計を実現しています(図1a, b)。量子ドットの中にいる電子の数が1個でも増減すると、その電荷の変化を感じてポイント接合を流れる電流が変化するため、量子ドットに電子が出入りしたことが分かります。しかしそれだけでは、その電子がどちらから来たか、またどちらへ行ったかは分かりません。今回開発した単電子電流計では、量子ドット2つを直列に並べることによって、電子がどちらの方向に動いたかが分かるように設計されており、それによってはじめて単電子電流計が実現されました。

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図1. 単電子電流計の構造 (a,b) と測定例 (c)
二重量子ドットを通して電流を流すと、隣接するポイント接合を流れる電流は、3つのとびとびの値の間を飛び移るような変化を示します。これらは、電子1個が1) 左側の量子ドットに入った状態、2) 右側の量子ドットにとび移った状態、3) 右に出ていった状態、と順に変化してゆく様子をあらわしています。二重量子ドットを通り抜けた正味の電子数をカウントすることにより、極めて微小な電流の測定が可能になります。

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図2. 単電子電流計を用いた単電子トランジスタの測定
数十アトアンペア(アトは100京分の1)から数アトアンペアという、従来では測定不可能な微小電流領域においても、単電子トランジスタに特徴的な電流ピークが明瞭に観測されており、このときの電流雑音は約3アトアンペアと、従来の高感度電流計の感度を3桁以上も上まわっています。